Waltimo先生の論文を読んでみましょう
投稿日:2016年10月7日
カテゴリ:根管治療(歯の神経の治療)
今回はClinical efficacy of treatment procedures in endodontic infection control and one year followup of periapical healing というぶんけんをご紹介いたします。
ではAbstractから。
『この実験は次亜塩素酸Naと水酸化Caによる、根尖性歯周炎に対する治癒の影響を評価するのが目的』だそうです。
50本の慢性根尖性歯周炎と診断された歯をランダムに3種類の治療法で治療しました。
1、Single visit群(一回で治療を完了したという意味)n=20(以下SVと呼びます)
2、水酸化Caを1週間貼薬した郡(治療を2回して、次の治療までに水酸化Caを入れる)n=18(以下CH)
3、水酸化Caを入れないで治療を2回に分けた群n=12(以下EC)
この3つの群を52週間かけてレントゲンで評価しました。僕はよくわかんないんですが、ペリアピカル インデックスというもので評価したそうです。
全部の歯から、術前に菌が検出され、根管形成、洗浄後は20~33%まで、検出率が下がりました。
2度目の来院時、CH群は33%で菌が検出され、EC群では67%の菌が検出された。
2度目の来院時にも、次亜塩素酸Naで洗浄すると菌数は有意に減らせて、たった2本のからしか菌は検出されませんでした。
根尖病巣の治癒に3つの群で差は非常に少なかった。2回に治療を分けることはネガティブなインパクトしか与えられなかった・・・
というのが大体の直訳です。
ではMaterials and methodsを読みます
50本の歯は前述のペリアピカルインデックスのスコアが3~5の物を集めた。(3がどんなんで、5がなんなのかはわかりません笑)
ラバーダムを使い治療を行った。まあ、大前提ですよね。これしないと治りませんし、そもそも、正しく根管内から、菌のサンプリングが出来なくなってしまう笑
ラバーは0.12%のクロルヘキシジンで消毒したみたいです。ほうじょう歯科では30%H2O2という、かなりデンジャラスな薬品でラバーの消毒をしてます笑
根管形成にはステンレスファイルを使ったそうです。
次亜塩素酸Naは2.5%を使ったようです。ほうじょう歯科では6%を使ってます。開封と同時に濃度が下がっていくというデータもありますんで、濃い方が好きです。
根管形成が終わるとペーパーポイントで乾燥し、最終形成号数より1サイズあげてファイリングして、5~8ミリのところでファイルをカットして菌のサンプルをつくりました。(Pi1)
2度目の来院時はCH群はリン酸で中和して食塩水で洗いました。EC群は食塩水で洗いました。
その後、同じ方法で菌を採取。(A2)
で、そのあと、次亜塩素酸Naで洗浄し、1回目よりサイズをあげ、菌を採取しました。(Pi2)
術後の評価は4週後、12週後、26週後、52週後の評価しました。全部レントゲンで。
では、Resultへ
ぼやけてますがギリ読めますよね。
ファーストアポイントメントを見て下さい。
SVは根管形成、洗浄の後、20%から菌が検出されて、
CHは22% ECは33%検出されました。
ここまでは、やってること一緒なんで、差が出ても気にしちゃいかんのです笑
20%と33%はかなりちがいますがn数少ないんで仕方ないです。
ではセカンドアポイントメントを見て下さい
アクセス時
CHは33%、ECは67%も菌が検出されております。
これは、水酸化Caを使っても菌は2回目の治療までの間に増えちゃうという事を示唆してます。
ただ、すいかる使うと、使わないよりはかなり少なくできます。
Pi2は2回目の治療で洗浄が済んだ後の菌の検出率です。
CHは0%で、ECは17%
やっぱり、治療が2回に及ぶときは、すいかるは入れるべきですね。
テーブル2、3はどんな菌が検出されたかです。
ディスカッションで出てきますが、水酸化Caの耐性菌のエンテロコッカスフェカリス(エンド業界では超有名)やカンジダは思ったほど検出されなかったんですね。逆に耐性菌でもないペプトストレプトコッカスやらベイロネラやらがわいてます。
興味深い。
左がCH、右がEC
細菌が好きな先生は是非、原文で読んで下さいね。
私は全然細菌詳しくないんで申し訳ない。
このグラフは、3つの群の予後です。
どれも治っては行くわけです。
しかし興味深いのはSVが一番結果が良い。
私も一回治療は結構やるんですが、患者さんに『一回治療なんて良くないんですよね』みたいなことを最近も言われました。私からすれば、良くない理由は何?って感じですけど。日本の制度だと、一回で根管治療を完了させる時間が取れない、汚れを取るために必要なマイクロスコープと超音波チップを持っていない先生が殆どを占めている・・・とかが問題なんじゃないですかね。
最後になりましたが、このグラフは、菌が検出された群と、検出されなかった群で予後を比較したものです。
無菌状態にした方が良いには決まっているんですが、居ても結構治ってますよね。
菌数を減らして菌を埋没して、免疫力が相対的に上回るようにすることが根管治療の目的なんだな、と思わされるグラフですね。
最近、時間が無くて、ブログ、滅多に書けてなくて、たまに書いたと思ったら歯医者にしかわからんマニアックなこと書いてばっかりですみません( 一一)
僕のブログを読んでくれている先生がたの明日の臨床に少しでもお役に立てていれば幸いでございます。
あと、歯の知りたいで、移殖について執筆しました。ご興味のある方はよろしくお願い致します。
JOE VOL31Number12 December2005より
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