根管治療(歯の神経)|東京日本橋の歯医者|ほうじょう歯科医院新日本橋

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根管治療(歯の神経)

このページの目次

根管治療

根管治療とは何か

精密根管治療

虫歯を放置すると上の絵のように神経にまで虫歯が広がってしまう事があります。そうなった場合、無症状でありながら神経が蝕まれていく場合と、症状が強く痛み止めも効きにくいような場合の二つの状態になりえます。症状が無い場合、患者さんからすればラッキーと思うかも知れませんが運が悪いと神経が様々な菌によって腐ってしまい、上の図の一番右の図のような根の先の骨が溶かされた状態になってしまうことがあります。

一番右の図では菌の出す毒素(LPS、リポタイコ酸)により、骨が溶かされてしまいます。これ状態を専門用語で根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と言います。根尖性歯周炎は神経の管の中の菌を除去することで治癒が見込めますが、その成功率はマイクロスコープを用いても90%前後と言われています(Moneaらの調査)

その反対に神経に虫歯が達し、強い痛みが出ることもよくあります。その状態を専門用語で歯髄炎(しずいえん)と呼びます。歯髄炎に関しては神経を取ることで症状を落ち着かせることが出来ます。 上記の根尖性歯周炎と歯髄炎の治療のことを根管治療と呼びます。

M.Tropeによると、根管治療の目的とは『根尖性歯周炎の治療と予防』と定義づけられており、適切に根管治療が出来ないと根尖性歯周炎は再発してしまいます。一番大事なことは、根尖性歯周炎にならないようにするために適切に抜髄を行う、さらに言えば虫歯をつくらないようにすることだと言われています。

根管治療の実際

根管治療図のように神経まで到達した歯は神経を取る治療(以下抜髄)を行うことが一般的です。(例外としてMTAを使って神経を保護する生活歯髄切断などもありますので、当サイトのMTAを参照ください)

抜髄はどんなことをするのかというと、細い金属で出来た、『こより』のようなもの(以下ファイルと呼ばせて頂きます)で神経の管を広げながら神経をねじ切っていくようにして行います。

神経の管のお掃除に用いるファイルですが、主にステンレスで出来ているものと、ニッケルチタンで出来ているものがあります。(詳しくは後ほどファイルの種類にて)

ニッケルチタンファイル図のようにファイルは金属の部分がギザギザしており、神経の細い管に挿入したあとに神経をからめとっていくようにして掃除をしてきます。

一般的にはこのファイルと呼ばれるものは一回使ったら滅菌消毒して他の患者さんにも使いまわしていきます。しかし、何度も使うと金属疲労を起こし、神経の管の内部で破折してしまうことも度々おこります。

なので、自由診療で行う根管治療では患者さんから費用をチャージする代わりにいつも新品のファイルを使い、破折を予防することが出来ます。ファイルが折れると非常に厄介です。詳しくは当サイトの破折ファイル除去をご参照ください。

根管治療の失敗について

また、抜髄は失敗することがあります。失敗するとどうなるかというと、根の先の骨が溶けてしまいます。さらにひどくなると膿が歯茎から漏れてくる、瘻孔(フィステル、サイナストラクト)と呼ばれる状態に進行することもあります。この状態を根尖性歯周炎と呼びます。

精密根管治療

図は当院で実際に治療を行ったケースです。わかりにくいかもしれませんが骨が大きく溶けてしまっています。根尖性歯周炎は非常に治療が難しく、Gorniらによると『1再治療である2レントゲンで骨が溶けている3根管の形態が維持できていない』という場合、専門医が治療しても成功率はなんと40%以下になってしまいます。これはマイクロスコープを使っていないという条件でのお話になりますが如何に再治療になってしまった根管治療が難しいかを物語っていると思います。

根管治療の成功率

根管治療は100%の成功を保証できる治療ではありません。ではどのくらいの成功率なのかというと世界的にみると抜髄に関しては90%以上であると言えます。(Ingleら1965、Weigerら2000)なんと1960年代から成功率はかなり高かったことがわかります。しかし日本ではどうなっているかというと、2012年の医科歯科大学の調査では50%以下であることがわかりました。これは世界とかなり乖離していると言えます。なぜここまで差が生まれてしまったかというと、どうやらラバーダムを装着するかどうかが重要なカギになっているとの見方が、日本の歯内療法専門医の間では言われています。ラバーダムに関しましては、当サイトのラバーダムをご参照ください。

では再根管治療の成功率はどうでしょう。抜髄は90%くらいということでしたが再根管治療に関しましては69%(Gorniら)という意見もあれば、84%(トロント大学)という意見もあります。どうしてこんなに意見に開きが出るかというと、マイクロスコープを使うか使わないかがカギを握っています。Gorniの調査では拡大鏡(2~3倍)を用いて治療していますが、トロント大学ではマイクロスコープ(20倍程度)まで拡大できるものを使っております。どちらもラバーダムはしっかり使っていますし、薬剤も適切に扱われていますので、マイクロスコープの有無がここまで大きな差を生むことになるということを示しています。

さて、ラバーダムとマイクロスコープを用いて再根管治療を行うと、かなりの成功率が出せることがわかりましたが、それでも抜髄の成功率の高さにはかないません。つまり、最も重要なことは「ラバーダムを使い、適切に抜髄をする」という一言に尽きます。日本のラバーダム装着率は数パーセントと言われています。日本でもっとラバーダムが普及するようになれば患者さんにしたらすごく良いのに残念です。

根管治療は痛いのか?

① 治療前

治療前

② ラバーダム

ラバーダム

① エックス線のような歯の治療をするとします。この歯は神経が自然に腐ってしまった、歯髄壊死という病名の歯に根管治療をしたものです。神経は死んでいますので、削られても痛みはありません。しかし、麻酔をかけたほうが好ましいと言えます。理由は、『ラバーダムが痛い』こと『神経の管の長さを測るときに歯のそとを一瞬つつく必要がある』こと、そして『生き残りの神経が万一残っていたら痛い』ことが挙げられます。

② ラバーダムから解説します。ラバーダムはこのように金属を歯と歯茎の間に食い込ませます。これが歯茎に刺さる感じがあるために、痛みが生じます。

③ X線写真

X線写真

④ 再治療

サンプル

③ 理由2のつつく必要がある問題ですが、このように神経の管の長さをはかるときは必ずX線写真で確認することが推奨されています。理由は電気的根管長測定器には多少の誤差があるためです。根管長測定器で信頼性の高い瞬間があり、その瞬間とは『器具が神経をとびだした瞬間になります。よってその長さを信用し、本当に正しいかレントゲンで確認します。そのちょっと飛び出る瞬間はやはり痛いです。最後の生き残りの件ですが具体的な症例で見てみましょう。

④ この症例は根管治療を行ったにも関わらず、熱いものがしみていました。残留した神経の存在を疑い、再治療を行うことにしました。

⑤ 術後

サンプル

⑥ 治療後

サンプル

しっかり神経を取り、術後、熱いものはしみなくなりました。このような症例では麻酔しないで行うと激痛です。術中の痛みの原因を列挙させて頂きました。では根管治療の術後の痛みの解説をしたいと思います。一般的にフレアアップと言われる現象で、根管治療後の7~21%(文献により差があります)に起こると言われています。

この原因としては、根管治療によって生じた削りカスが根の外側に出てしまうこと、根管治療に用いる洗浄液が根の先から出てしまった場合などが考えられます。対処としては痛み止めを処方します。フレアアップに対し抗生物質は先進国ではあまり意味が無いと考えられています。しかし二次感染が考えられるような症例では処方することも考えられますので、担当の先生のお考え次第で処方もあり得ます。

根管治療の期間

「根管治療は何回通ったら良いかわからない」という声をよく耳にします。しかし、根管治療の世界ではグローバルスタンダードと言われている歯内療法の教科書『Path ways of the Pulp』によると、「1回治療と複数回治療を比較した場合、抜髄に関しては1回治療の方が好ましい。再治療でも統計学的有意差は認められない。」との記述があります。沢山通ってもらうことよりも短期間にしっかり神経や感染源を取ることの方が大切であるということです。ただし、レントゲン像に変化が現れてくるのに3カ月~6カ月かかります。治療期間、回数は短い方がいいですが、経過観察がとても重要になってきます。

根管治療のリスク・注意事項

先に書かせて頂いたとおり、治療後にはフレアアップと呼ばれる急性転化が起きる可能性が7~21%程度あると言われています。「いままで痛くなかったのに治療したら痛くなった」ということをよく耳にしますが、確かにそのようなことは起こりうる問題です。しかし重要なのはフレアアップすることと、治るか治らないかは全く関連がありません。よく、「痛くなってしまったからもう治らないのでは」ということを耳にしますが、それは違いますのでご安心ください。また、根管治療は『100%の成功率は誰にも出すことは出来ない』というのも重要です。保険外で治療を行っても、治らないケースはもちろんあります。(根管治療の成功率をご参照)

根管治療に必要なツール

ラバーダム

根管治療ラバーダムとはゴムのシートと金属で出来たクランプ、フレームからなる装置で、平たく言うと『歯を唾液、呼気から守るもの』です。図のようにゴムのシートから歯だけが飛び出るようにして金属で押さえつける形で使います。ラバーダムをしたあとは、シートと歯を過酸化水素(30%)+ヨードで消毒するのが一般的ですが、次亜塩素酸Naで消毒しても同様の効果が得られるとの報告もあり、私は安全な次亜塩素酸Naで消毒を行っております。30%の過酸化水素は強力で、テーブルに誤って垂らしてしまうと、気づかずに触れれば大やけどをしてしまいます。

ラバーダムはオラシール(ウルトラデント)を用いて漏れが無いようにしていましたが、何度かひやひやしたことがあり、より安全な消毒方法に最近は変更しました。ラバーダムは保険では点数が設定されておらず、歯科医師が使用するとなると完全に自腹になってしまいます。歯科の保険点数は元来低く設定されているため、ほとんどの歯科医師はラバーダムを断念してしまいます。すると、大学生のころの実習以来ラバーダムを付けていないので、技術的に『つけられない』先生が増えております。残念ながらラバーダムが発明されてから100年近く経ち、効能も証明されていながら日本で普及しないのは保険診療の闇ともいえると思います。

ファイル

ファイルの色々

根管治療ファイルには色々ありますのでご紹介いたします。大きく分けてステンレススチールファイルとニッケルチタンファイルがあります。ステンレススチールファイルの特徴は『1安価2何度も使える3破折する前に予兆がある』です。日本では根管治療は保険で行われることがほとんどですのでこちらを選択する先生がほとんどです。しかし、ステンレススチールファイルは硬いために、神経の管の掃除をしている際に過剰に歯を削ってしまうというデメリットがあります。

ステンレススチールファイルは便利で私も使いますが太くなるとどんどん硬くなるので、細い番手のみ使う方が、歯を削る量は抑えられると言えます。ニッケルチタンファイルの特徴は『1単回使用が原則2高価3破折の前に予兆がない』です。しかし、柔らかくしなるため、神経の管に沿って曲がってくれます。そのため、過剰に歯を削らずに治療ができることが最大の強みです。根管治療の最大の敵は歯根破折です。(歯根破折に関してはファイバーコア参照)歯根破折は歯を削りすぎるとよりなりやすくなります。ニッケルチタンファイルはそういった意味で歯の延命に役立つと言えるでしょう。

根管治療図は最新のニッケルチタンファイルの『XPエンド』と言います。神経の管は性能が高いとされるニッケルチタンファイルをもってしても40~60%くらいしか触れていない(O.A.Pieters)という調査があり、それに対処するために、細くしなるニッケルチタンファイルを敢えてぐにゃぐにゃに曲げて神経の管の内部の色々なところを触れるようにしたというファイルです。私は5種類のニッケルチタンファイルを症例によって使い分けています。どれも優れていますがそれぞれ得意、不得意な症例があるため、使い分けが重要になります。

折れたファイルの除去

精密根管治療

ニッケルチタンファイルやステンレスファイルは繰り返し使うことで何の前触れもなく折れることがあります。ファイルは折れてしまうと除去が難しく、出来る事ならファイルは破折させないで治療することが重要です。折れてしまった部分は根管の中深く落ちてしまい取ることはおろか、目で確認できなくなってしまうため、マイクロスコープを使用していなければそのまま放置してしまうケースがほとんどです。

折れたファイルはそれ自体が悪さをするわけではありませんが、除菌のための処置を妨げる要因の一つになります。可能であれば除去が望ましいと言えます。

マイクロスコープ

マイクロスコープとは、強力なライトを備え付けた巨大な手術用の顕微鏡です。脳外科や耳鼻科では昔からよく使われていましたが、1990年頃から米国で歯科にも使われるようになってきました。歯の神経の管は非常に細く暗いため、マイクロスコープが出てくるまでは誰も見ながら治療することが出来ませんでした。手探りの治療は成功率も低く、運任せ、経験重視になってしまう部分がありましたが、マイクロスコープが普及したことで神経の管の内部を実際に見ながら治療できるようになりました。マイクロスコープの優れたところは拡大視野を確保しながら、実際に超音波などを使い感染源と思われる箇所を目視しながら除去できることです。それにより従来困難であった治療が行えるようになり、高い成功率を達成するようになりました。

当院では2台のマイクロスコープが稼働しております

マイクロスコープ

当院にあるマイクロスコープです。左からグローバル、カールツアイスです。グローバルはアメリカでもっとも売れているマイクロスコープです。非常に使いやすく、アメリカの専門医教育で実際に使われている実績があるために当院でも採用しております。カールツアイスはドイツの有名なレンズのメーカーで、カメラ好きの方にはなじみが深いのではないでしょうか。非常に使いやすく、ピコモーラーという独特の横の振りが出来ます。副院長がメインで使っております。

MTA

MTA(Mineral Trioxide Aggregate)は、ケイ酸カルシウムなどを主成分にしたセメントで、96年ごろモハメド・トラビネジャド先生に発表されてから歯内療法の分野では世界中で多くの臨床家に支持されております。薬効としては骨の誘導、中期的に持続する抗菌作用が挙げられます。MTAの適応症例は幅が広く、下記3点あります。

MTAによるパーフォレーションの治療例

 MTAによるパーフォレーションの治療例

神経の管では無い、黒枠部分に誤って穴が空いてしまっていたケース。これは抜歯になる場合が多いですが、MTAで封鎖後根管充填を行い、抜歯を回避しました。

MTAによる歯髄保護症例の治療例

MTAによるパーフォレーションの治療例

虫歯を除去すると神経が出てきたケースでも、MTAにて歯髄(神経)を保護し修復。神経を抜く治療は必要ありませんでした。

MTAによる外科的歯内療法の治療例

MTAによる外科的歯内療法の治療例

いわゆる歯根端切除術(外科的歯内療法) です。MTA&マイクロスコープの登場で、歯根端切除術の成功率は60%から95%まで上昇しました。

土台(コア)づくりの精度も、根管治療の成功の1つのカギ

土台(コア)

神経を除去した歯は被せ物を作る前に土台を立てます。従来は金属で土台をたてることが主流でしたが、近年はグラスファイバーで土台を立てることが主流になってきました。ここではコアのお話をさせていただきます。

コアの種類

コアの材料には何種類かあります。

メタルコア

メタルコア

根管治療が終わった後にかたどりをして技工士に作ってもらう土台をメタルコアと言います。釘のような構造のため、歯根破折が起きやすいと言われています。

ファイバーコア

ファイバーコア

グラスファイバーをコア材にすることでメタルコアのような破折を防ぐことを目的として使用されています。歯と同程度の硬さが特徴で、金属を使用していないため、歯根が黒くなりにくいと言われています。

スクリューポスト

スクリューポスト

ねじのような素材を根管内に挿入して使います。金属を使っているため、歯根破折のリスクがファイバーと比較すると高くなります。

土台を立てる為には何回通院が必要か?

メタルコアの場合、型どりしてから完成までに日数を要しますので2回の通院が必要です。ファイバーコア、スクリューポストは一回の来院で入れることが出来ます。

土台を立てる上での注意

根管治療後に行う作業なので、ラバーダム下で行われることが望ましいです。また、ファイバーコアやレジンコアを使用する場合はレジンを固める際に、ひずみが生まれてしまうため、一気に充填すると剥がれやすいと言われています。(コントラクションギャップ) 充填する際は何回かに分けながら一方向にひずみが進むように充填する工夫が必要です。

土台を立てるところまでが根管治療

根管治療を無菌的に行えていても、土台を立てる時点で唾液が入ってしまうと根管充填剤を通過して菌が侵入することが知られています。根管充填が終わり次第、土台をたてるのが現在ゴールドスタンダードと言われています。

外科的歯内療法(=歯根端切除術)とは

外科的歯内療法

歯根端切除術とは、歯内療法の一種の治療法です。歯内療法は主に根管治療が一般的ですが、根管治療で治らない場合には、感染した歯根の先を切り落とす治療も存在します。それが歯根端切除術です。歯根端切除術には歯茎を開いて病変及び根尖3mmを切除する方法と一度抜歯し感染源を取り除いてから元の位置に戻す意図的再植という方法があります。

歯根端切除がなぜ必要なのか

根管治療は成功率を100%にすることは不可能です。論文により差があるものの、マイクロスコープをもちいた再根管治療では80〜88%と言われております。嚢胞化している症例や根の外側に感染が及んだ症例は、根管治療だけでは治りませんので、感染した歯根の先ごと感染源を切除し取り除きます。

根管治療不可能な歯がある

長すぎるファイバーポストや、自費で入れた被せ物を除去できないケースなど、何かしらの理由で修復物を外さず、根管治療を行わなければいけない症例が存在します。そのようなケースにも外科的歯内療法が適応となります。

治療前

サンプル

治療後

サンプル

治療前:この症例は病変が非常に大きく、さらに病変の中に異物(破折器具)が含まれていました。このような症例は外科的に除去する方法以外に難しい症例と判断します。

治療後:歯根端切除術を行い、骨が再生していることを確認しました。このように、歯根端切除術のみ治療が可能な症例も多く存在します。

歯根端切除術の成功率はどのくらい?

  • マイクロスコープを使った歯根端切除95%
  • マイクロスコープを使わなかった歯根端切除59%

(参考:Frank C Setzer :Outcome of endodontic Surgery:A metaanalysis of the literature)

上記データより、マイクロスコープ(歯科顕微鏡)を使用するのと使用しない歯根端切除術では大幅に成功率が違うのがわかります。歯根端切除術においてマイクロスコープは必須機器といえるでしょう。

意図的再植について

予知性の非常に高い歯根端切除術ですが、どうしても行うことが出来ない症例が存在します。具体例をあげると、『上下の一番奥の歯(7番)』、『おとがい神経を損傷する可能性が高い症例』『上顎洞に病変が入り込んでおり、骨の境界が見えない症例』などが挙げられます。そのような場合、意図的再植(一度抜歯して植えなおす)を選択する場合があります。以下に適応症となったものを紹介します。

治療前

サンプル

治療後

サンプル

上顎洞に根管充填剤が入り込んでしまったために、一度抜歯しバイオフィルムごと歯根の先を切り落とし再度埋め直すことで治療しました。意図的再植は予知性が高い治療ですが、残念ながら、抜歯の際に歯根破折(歯が折れてしまう)ことがあります。破折した場合、抜歯になってしまうケースがほとんどです。よって、可能であれば歯茎を開いて病変を切り取る、通常の歯根端切除術のほうが良いと言えるでしょう。

歯根端切除術を過去に行った歯が再発した場合

歯根端切除術はマイクロスコープがあれば非常に成功率の高い治療と言えますが、マイクロスコープが無い場合は59%(専門医が行っても)というデータがあります。すなわち失敗症例も世間には多いです。歯根端切除術が失敗した場合、リカバリーの方法として、再歯根端切除術が考えられます。歯根端切除を行われた歯にはMTA(当サイト参照)が充填されていることが多く、再治療は難しいと考えられます。外科症例のリカバリーは外科で行うのが一般的でしょう。

当院で行った再歯根端切除術の症例

歯根端切除術前

サンプル

歯根端切除術後

サンプル

切除前:他院にて、2年前に歯根端切除術を受けたが再発したため、当院に紹介されてきたケースです。

切除後:破折が強く疑われるケースだったため、歯根端切除が適応と判断し、再度歯根端切除術を行いました。治癒の傾向が認められます。

歯根端切除術まとめ

外科的歯内療法はマイクロスコープを用いることで成功率は格段に上がります。しかし、外科的歯内療法には専門のトレーニングをたくさん積んだドクターしかできないことが強いて言えば欠点です。上記動画のように歯根端切除術の難易度が高いと言われる部位もあります。極力外科に頼らず治療を進めておりますが、万一治らなかった時のオプションがありますので、ご相談ください。

再発してしまった場合の根管治療

過去に神経を取った歯が痛くなった、膿が溜まっていると言われた歯の治療についてご説明します。(根管治療の再発についてのご説明)

根管治療の再発上記に述べさせていただいた通り、神経を取った歯の半数以上がどこかのタイミングで再治療が必要になるケースがあります。

また、再治療は、神経を抜く時よりもさらに成功率が下がると言われています(一説には60%以下)。

インプラント治療の成功率が90%を超えた現在、そのような難症例は早めに抜歯して、インプラントへという風潮がありますが、私は、残せる可能性があるのならば、厳しくてもトライしたいと考えております。

また、再治療の場合、マイクロスコープが非常に有益になる場合が多いです。再治療を行った後、予後が悪い場合、外科処置で対処しなければいけませんが、この場合も、マイクロスコープはかなり重要になってきます。

レントゲンではわからない病変の発見にはCTが有効

CTと根管治療

これは一般的なレントゲンでは、まったく問題なく、痛みの原因が特定できなかった症例です。こういったケースではCTにて初めて原因がわかることがあります。レントゲン上で一番左上の歯は病変が確認できず、痛みの原因がわかりませんでした。CTで撮影してみると、大きな病変がわかります。このように、一般的なレントゲンで検出できなかった病変の診断にCTは大変有効となります。

自費診療と保険診療の根管治療について

自費と保険の根管治療の違い

Regenerative Endodontics(リバスクラリゼーション)とは

一般的に「歯の神経は死んでしまうと再生することはない」と考えられております。また、歯根(歯の歯茎の中に埋まっている部分)が未完成な状態で神経が死んでしまうと短い歯になってしまいます。

以下ではそのような歯に対し、特定の条件を満たすことで神経と血管を再生する、Regenerative Endodontics(リバスクラリゼーション)をご説明いたします。神経を再生する治療という意味でRegenerative Endodontic Therapyと呼ばれますが、厳密には元どおりの神経になっているわけではないので、血流が再開しているという呼び方のRevascularizationという呼び方をされることもあります。教科書的にはどちらも使われています。

Regenerative Endodontics(リバスクラリゼーション)の適応症

根未完成の永久歯で、神経が壊死してしまった症例が適応となります。神経が死んでしまった原因には色々考えられると思われますが、適応症のほとんどは下記2つが多いと考えられます。

外傷により神経が死んでしまった

中心結節が破折し、神経が死んでしまった

世界的に有名な歯内療法の教科書である、Pathways of the Pulp (Cohen2020)で紹介されている症例でも①と②にあたるもののみが紹介されています。

Regenerative Endodonticsの実際の手順

アメリカ歯内療法学会

AAE(アメリカ歯内療法学会)のガイドラインによると、

【1回目】

症状・治療内容を説明し、同意を得る

麻酔をし、ラバーダムを装着

根管内の洗浄と根管の長さを計測

1.5%の次亜塩素酸ナトリウムを5分かけて20ml洗浄し、生理食塩水で同量洗浄する

根管内を乾燥する

水酸化カルシウムもしくは抗生物質を根管内に入れる

仮の蓋を入れる

【2回目】(2〜4週間後)

症状がないかを確認

メピバカインにて麻酔し、ラバーダムを装着

17%EDTAにて洗浄(30ml/5分)し、生理食塩水にて洗浄(5ml/5分)

根管内を乾燥

#25のKファイルで根管の外2mmまで突き出し、出血させ、CEJまで血を貯める

コラプラグを血液の上部に設置し、バイオセラミックを入れる

3mmグラスアイオノマーセメントを入れる

3ヶ月ごとに経過観察を行い、4年間、経過観察する

となっております。

しかし、最新の論文を読んでいくとエンドバックという機材で洗浄することで1回治療でも成功率は変わらないという話や、抗生物質の中にテトラサイクリンが入っていると歯が変色してしまうので推奨されないなどのアップデートもありますので注意が必要です。

Regenerative Endodonticsを行った1症例をご紹介

当院の院長北條が実際に過去に行った1症例をご紹介します。中心結節という部分が破折し、神経が死んでしまった歯の症例です。▼画像をクリックすると拡大します。

リバスクラリゼーション症例

中心結節という部分が破折し、神経が死んでしまった歯です。

リバスクラリゼーション症例

ラバーダムを装着して、丁寧に歯を削りました。

リバスクラリゼーション症例

神経の管の内部は汚れがたくさん付いていました。プロトコールに従い、綺麗にします。

リバスクラリゼーション症例

水酸化カルシウムを入れて1日目を終えました。

リバスクラリゼーション症例

2日目は洗浄を行い、MTAセメントを入れました。経過観察を行い、神経の状態を確認します。

治療前

治療前

治療から3ヶ月後

治療から3ヶ月後

術後3ヶ月のレントゲン写真になります。術前と比較し、根の先が閉じてきていることがわかります。

Regenereitive Endodonticsのまとめ

Regenereitive Endodonticsは神経を再生させる夢のような治療と思われがちですが、適応症の範囲が狭く、中々症例としては多くはないと思われます。

しかし、外傷などで前歯をぶつけて、子供なのに神経が死んでしまった方はこのような治療が存在することは知っておくといいと思います。

症例も限られ、比較的新しい治療なので知らない歯科医師も多いと思われますので、ひょっとしたら適応症かもしれないと思われましたら、歯内療法専門医を訪ねてみてもいいかもしれません。

日本橋で精度の高いマイクロスコープ根管治療をご希望の方へ

日本橋でマイクロスコープを使用した根管治療を行っている歯科医院は少ないです。ほうじょう歯科 新日本橋では、マイクロスコープを使用した根管治療をご希望で、日本橋以外から来院される患者様も多数いらっしゃいます。マイクロスコープ使用の再発しにくい根管治療を、新日本橋駅1分、夜19時までという通いやすい環境で受診してください。

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